Fe-57を用いた太陽アクシオン探索

QCD における「強い CP 問題」を解決するために考案されたアクシオン模型は、未発見の新素粒子「アクシオン」を予言します。われわれは、太陽からアクシオンがやって来ている可能性を考え、太陽アクシオン探索実験を行いました。通常の太陽アクシオン検出実験は、アクシオンと光子との結合を仮定して強磁場を用いて行うのですが、アクシオンのモデルによっては、その結合が非常に弱い場合も考えられます。そのため、われわれの実験では、アクシオンモデルに依存しないアクシオンと核子の結合を利用して太陽アクシオン探索を行いました。

具体的には、太陽中の 57Fe 原子核が熱的に励起されて、脱励起の M1 遷移時に放出するアクシオンを、地上の 57Fe 原子核で共鳴吸収して検出します。

左の写真が検出器です。銀色に光っている部分が 57Fe の薄膜で、その両側を、シリコン検出器でサンドイッチして、アクシオンを共鳴吸収した際に放出する 14.4keV のガンマ線を検出します。間に挟む薄膜を、95% 57Fe の場合と、57Fe を 2.2% しか含まない通常の鉄の場合の両方測定して、差し引く事により、太陽アクシオン起因のシグナルを抽出しました。

上図が差し引いた後のスペクトルです。シグナルが期待される 14.4keV 近辺にシグナルが無かったため、アクシオンは見つかりませんでしたが、アクシオンの質量に対して、m<216 eV (95%CL) の世界で最も厳しい制限を得ました。

発表資料