TeV スケールの余剰次元などが存在した場合、オルソポジトロニウムが崩壊時に消えてしまう事が予言されています。このように、オルソポジトロニウムが不可視崩壊をする現象を探索しました。
探索には、総計約 1 トンの CsI(Tl)/NaI(Tl) シンチレータを使用し、中心部で生成されたオルソポジトロニウム崩壊時のガンマ線を確実に捕らえるように設計しています。
中心のポジトロニウム生成部分は、22Na の β+ 線源とシリカエアロゲルから成っており、潰したシンチレーションファイバを使用して β+ 線のタグを行っています。この検出器を用いて、「シンチレーションファイバでタグされた」+「22Na が β+ 崩壊した際の 1275keV ガンマ線が検出された」+「CsI(Tl)/NaI(Tl) シンチレータにポジトロニウムからのガンマ線が検出されなかった」という条件で、約半年間にわたって不可視崩壊を探索しました。
このスペクトルは、シンチレーションファイバと 1275keV ガンマ線でタグした時の CsI(Tl)/NaI(Tl) シンチレータのエネルギー分布です。ほとんどのイベントは、対消滅に相当する 1022keV にピークを作っており、不可視崩壊に対応する 50keV 以下にはイベントが無い事が分かります。この結果から、オルソポジトロニウムの不可視崩壊に対する分岐比に対して 6.9×10-7 (90%CL) 以下の制限を得る事が出来ました。余剰次元の制限に直すと、エネルギースケールが 0.42 TeV 以上 (n=2) に相当します。
発表資料
- 液体キセノン検出器を用いたオルソポジトロニウムのインビジブル崩壊の探索実験の提案, (水原慎一、日本物理学会第75 回年次大会、2020 年3月16日、名古屋大学(現地開催中止))
- オルソポジトロニウムの稀崩壊を用いた余剰次元の探索, (兼田充、日本物理学会第 63 回年次大会、2008 年 3 月 25 日、近畿大学)
- オルソポジトロニウムの稀崩壊を用いた余剰次元の探索, (兼田充、日本物理学会第 62 回年次大会、2007 年 9 月 24 日、北海道大学)
- オルソポジトロニウムの稀崩壊を用いた余剰次元の探索, (是木玄太、日本物理学会春季大会、2007 年 3 月 25 日、首都大学)
- オルソポジトロニウムの稀崩壊を用いた余剰次元の探索, (是木玄太、2006 年度修士学位論文)
- Search for invisible decay of ortho-Positronium, (難波俊雄、JPS APS 合同ミーティング、2006 年 10 月 30 日、シェラトンワイキキホテル)
- o-Ps→invisible 崩壊の探索 ー概要と検出器設計ー, (難波俊雄、日本物理学会第 61 回年次大会、2006 年 3 月 27 日、愛媛大学)
- o-Ps→invisible 崩壊の探索II ー検出器の製作ー, (是木玄太、日本物理学会第 61 回年次大会、2006 年 3 月 27 日、愛媛大学)