オルソポジトロニウムのinvisible崩壊の探索

余剰次元があると、崩壊ガンマ線が逃げて見えなくなる。

TeV スケールの余剰次元などが存在した場合、オルソポジトロニウムが崩壊時に消えてしまう事が予言されています。このように、オルソポジトロニウムが不可視崩壊をする現象を探索しました。
探索には、総計約 1 トンの CsI(Tl)/NaI(Tl) シンチレータを使用し、中心部で生成されたオルソポジトロニウム崩壊時のガンマ線を確実に捕らえるように設計しています。

シンチレータを組み合わせた実験装置。

中心のポジトロニウム生成部分は、22Na の β+ 線源とシリカエアロゲルから成っており、潰したシンチレーションファイバを使用して β+ 線のタグを行っています。この検出器を用いて、「シンチレーションファイバでタグされた」+「22Na が β+ 崩壊した際の 1275keV ガンマ線が検出された」+「CsI(Tl)/NaI(Tl) シンチレータにポジトロニウムからのガンマ線が検出されなかった」という条件で、約半年間にわたって不可視崩壊を探索しました。

得られたエネルギースペクトル。50keV以下にイベントは見つからなかった。

このスペクトルは、シンチレーションファイバと 1275keV ガンマ線でタグした時の CsI(Tl)/NaI(Tl) シンチレータのエネルギー分布です。ほとんどのイベントは、対消滅に相当する 1022keV にピークを作っており、不可視崩壊に対応する 50keV 以下にはイベントが無い事が分かります。この結果から、オルソポジトロニウムの不可視崩壊に対する分岐比に対して 6.9×10-7 (90%CL) 以下の制限を得る事が出来ました。余剰次元の制限に直すと、エネルギースケールが 0.42 TeV 以上 (n=2) に相当します。

発表資料