X線自由電子レーザーを用いた光子・光子散乱の測定

仮想電子を介して光子が散乱するファインマン図。

古典電磁気学では、光子は光子自身と相互作用しません。ところが、量子電磁気学(QED)の予言では、仮想電子のループを介して光子同士で散乱します。この現象は1936年に予言されましたが、実現は非常に困難で未だに観測されていません。われわれは大強度X線自由電子レーザーであるSACLAを用いて、光子・光子散乱を観測する実験を行っています。SACLAの超高輝度と高いエネルギーが大きなメリットです。

結晶を用いたX線の分岐と衝突。

上図がX線衝突の概念図です。1本のX線ビームをシリコン単結晶から切り出した刃によって回折、分離し、それを繰り返すことによって中央の2本を衝突させます。もし光子・光子散乱が起きると、前方に置いた検出器にはエネルギーが高くなったX線が飛んでくるため、一次光とは区別できるシグナルが観測されます

散乱断面積に対する制限。

2013年に世界で初めてX線領域での測定をおこない、散乱光は観測されませんでしたが、光子・光子散乱に対してX線領域では初の制限を得ることができました。その後、2015年の測定では3桁の感度向上を遂げました。SACLAの性能向上と、ブラッグ回折を利用した高効率な衝突システムの開発により更なる感度向上を目指します。

発表資料