静磁場中でのゼーマン効果を用いた間接測定

静磁場中でのポジトロニウムのエネルギー準位。

量子振動による方法と同様に、この方法でも、磁場中のポジトロニウムのゼーマンシフト (Δmix) を測定します。この方法では、Δmix に相当する RF を外部から印加し、o-Ps をゼーマンシフトの準位 (|+>) に遷移させる事で、測定を行います。o-Ps が 3 本のガンマ線に崩壊するのに対して、|+> の状態はほとんどが 2 本の 511keV ガンマ線に崩壊するため、遷移が起きると 2 本の単色ガンマ線の割合が増えます。磁場 (H) を変化させながら 511keV ガンマ線の量を測定する事で、遷移の共鳴曲線を測定しました。

実験装置の概念図。
実験装置の写真。

上の図がわれわれの実験装置の概念図と写真です。ppmの精度の精密な磁場を印加するために、KEK低温センターの大型の超伝導磁石を使用しています。また、ポジトロニウムの生成後の時間に依存した物質の影響等を正確に評価するために、時間情報を取得して解析を行っています。

磁場の強さと遷移の共鳴曲線。

上の図は、ガス0.881amagatにおけるゼーマン遷移の共鳴曲線です。各時間ウインドウで区切ってフィットしていますが、時間発展の方程式で記述される計算値が非常に良くあっていることが分かります。いろいろなガス圧で共鳴曲線の測定を行い、すべての結果をグローバルにフィットすることで、ポジトロニウムの超微細構造の値として、203.3942±0.0016(stat.)±0.0013(syst.)という理論予想値をfavorする結果を得ました。

発表資料