放射光施設を用いた光と弱い結合を持つ粒子の探索

標準理論を超えた理論の中には、光子と弱い結合をもつ軽い粒子の存在を予言する物がいくつかあります。たとえばアクシオンやパラフォトン、ディラトンなどです。これらの粒子は(もし存在すれば)加速器で到達し得ない非常に高いエネルギーの物理を反映していると考えられ、その探索を通して高エネルギーでの未知の物理現象を探ることができます。われわれは、放射光施設、SPring-8/SACLAの強力なX線を利用して、そのような粒子の探索を行っています。

壁越しに未知粒子を探す手法の概念図。

探索は、「壁を通り抜けてくる光」を探すことによって行います。光が未知の弱結合粒子に変換されると、その粒子は普通の壁を通り抜ける事ができます。壁を通り抜けた後で再び光に変換して観測することで、媒介した未知粒子を検出する手法です。変換の手法は、探索する未知粒子によって異なります。例えばパラフォトンと呼ばれる粒子は、伝播に伴って勝手に変換されます。また、アクシオンと呼ばれる粒子は強い磁場や電場によって変換されます。

われわれはこれまで、SPring-8のBL19LXUビームラインにおいて、3種類のユニークな手法で探索をおこないました。1つめは、単に真空パイプ中での変換を利用したパラフォトン探し、2つめは、強力なパルス磁石で変換をおこすアクシオン探し、3つめは、結晶中の周期電場を利用したアクシオン探しです。いずれの探索も未知粒子の発見には至りませんでしたが、未知粒子の存在に対して世界でもっとも厳しい実験的制限を得ることができました。特に、比較的エネルギーの高いX線を利用しているため、重い未知粒子に対して厳しい制限をつけています。下の絵は、横軸がアクシオンの質量、縦軸がアクシオンと光子の結合の強さをあらわしています。結晶の周期電場を用いた探索により、青い斜線の部分に制限をつけることができました。

アクシオンと光子の結合に対する制限。

発表資料