ボース-アインシュタイン凝縮を目指したポジトロニウム冷却

電子と陽電子から成るポジトロニウムは、ボソン(スピンが整数の粒子)です。ボソンは同じ状態を複数の粒子がとることが許されているため、低温に冷却すると一般にボース-アインシュタイン凝縮を起こすと考えられています。ポジトロニウムは質量が約1MeVと非常に軽いためにドブロイ波長が長く、この結果、一般の原子と比べて高い温度で凝縮すると計算されています(1018個/ccで10K)。もし反物質を含んだ系でボース-アインシュタイン凝縮を起こすことができれば、物質と反物質の対称性の研究や、ガンマ線レーザーの生成といった観点で大きな成果が期待できます。われわれのグループはシミュレーションを用い、ポジトロニウムを冷却する際に、レーザー冷却と呼ばれる手法をとることでボース-アインシュタイン凝縮可能な温度まで冷却できることを示しました。

ポジトロニウムの温度変化をシミュレーションで計算。レーザー冷却により、ボース-アインシュタイン凝縮が可能であることを示した。
現在想定している、冷却用レーザーシステム。

また、低温に冷やした微小空間中でポジトロニウムがどのように冷えていくかを詳細に調べました。現在は、冷却用レーザー光源の開発や、高密度陽電子ビームの開発などをおこなっているところです。

発表資料