量子電磁気学(QED)の予言では、真空は電子と陽電子のペアが常に生成と消滅を繰り返しています。この状態に外から非常に強い磁場を印加すると、真空が異方性を示し、磁場平行な方向と垂直な方向で屈折率が変わると予言されています。この真空の複屈折を世界で初めて観測するために、OVAL実験(Observing
VAcuum with Laser)を進めています。
上図が測定装置の概念図です。偏光したレーザー光に対して15Tの磁石で磁場をかけ、新たな偏光成分が生じていないかを観測します。感度を高めるために、フィネスが600,000程度の共振器の中で光を往復させています。
現在はプロトタイプの実験装置を使用して、感度を向上させているところです。実験の大きなキーポイントのひとつは、パルス磁石のノイズや振動がレーザー共振器に影響を与えないように実装する点です。電磁ノイズ対策や防振対策をすすめ、レーザーの安定性も高めることで、QEDの予言値まで3.5桁の感度まで迫っています。
発表資料
- パルス磁石を用いた真空の複屈折の探索, (上岡修星他、レーザー研究(レーザー学会誌8月号)、51(2023)527-531)
- OVAL実験: パルス磁石と高フィネス共振器を用いた真空複屈折の探索, (上岡修星、日本物理学会第76回年次大会、2021年3月14日、オンライン開催)
- Search For Vacuum Magnetic Birefringence with a high repetitive pulsed magnet, (上岡修星、2020年度博士論文)
- OVAL実験: パルス磁石と高フィネス共振器を用いた真空複屈折の探索, (上岡修星、日本物理学会第75回年次大会、2020年3月19日、名古屋大学(現地開催中止))
- OVAL実験: パルス磁石と高フィネス共振器を用いた真空複屈折の探索, (上岡修星、日本物理学会2019年秋季大会、2019年9月18日、山形大学)
- OVAL実験 ー真空の複屈折を測るー, (難波俊雄、テラスケール研究会、2019 年 6 月 8 日、東京大学)
- OVAL実験: パルス磁石と高フィネス共振器を用いた真空複屈折の探索, (上岡修星、日本物理学会第 74 回年次大会、2019 年 3 月 14 日、九州大学)
- OVAL実験の感度を向上を目指した新型パルス磁石の考察, (成田佳奈香、日本物理学会第 74 回年次大会、2019 年 3 月 14 日、九州大学)
- OVAL実験: パルス磁石と高フィネス共振器を用いた真空複屈折の探索, (上岡修星、日本物理学会 2018 年秋季大会、2018 年 9 月 17 日、信州大学)
- OVAL実験: パルス磁石と高フィネス共振器を用いた真空複屈折の探索, (上岡修星、日本物理学会第73回年次大会、2018 年 3 月 25 日、東京理科大学)
- High magnetic fields for fundamental physics, (T. Inada, et al., Physics Reports 765(2018)1, arXiv: 1803.07547)
- 高速繰り返しパルス磁石と高フィネスFabry-Pérot共振器を用いた真空複屈折の探索, (上岡修星、2017年度修士学位論文)
- パルス磁石と高フィネス共振器を用いた真空複屈折の探索, (上岡修星、日本物理学会2017年秋季大会、2017 年 9 月 15 日、宇都宮大学)
- Vacuum Magnetic Birefringence Experiment as a probe of Dark Sector, (X. Fan et al., Prog. Theor. Exp. Phys., 2018, 063B06 (17p.p.), arXiv: 1707.03609)
- Generalized Heisenberg-Euler Formula in Abelian Gauge Theory with Parity Violation, (K. Yamashita(Ocha-dai) et al., Prog. Theor. Exp. Phys. 2017, 123B03 (28p.p.), arXiv: 1707.03308)
- OVAL 実験 ー真空を探るー, (樊星他、高エネルギーニュース 36(2017)p.p.9-14)
- Probing Physics in Vacuum using an X-ray Free-Electron Laser, a High-Power Laser, and a High Field Magnet, (T. Inada, et al., Applied science 7(2017)671, 12pages, arXiv: 1707.00253)
- LSW experiments with pulsed magnets + Vacuum Magnetic Birefringence (VMB), (T. Inada, Workshop on HIgh MAgnetic Fields for FUNdamental Physics (HIMAFUN), 2017/5/30, University of Toulouse III, France)
- The OVAL experiment: A new experiment to measure vacuum magnetic birefringence using high repetition pulsed magnets, (X. Fan et al., Eur. Phys. J. D71(2017)308, 10p.p., arXiv: 1705.00495)
- Search for Vacuum Magnetic Birefringence with Pulsed Magnets, (S. Kamioka, Light driven Nuclear-Particle physics and Cosmology 2017 (LNPC’17), 2017/4/21, Pacifico Yokohama)
- 樊さんが東京大学総長賞を受賞しました (2017年3月22日、受賞時の記念写真)
- パルス磁石と高フィネス共振器を用いた真空複屈折の探索I, (樊星、日本物理学会第72回年次大会、2017 年 3 月 17 日、大阪大学)
- パルス磁石と高フィネス共振器を用いた真空複屈折の探索II, (上岡修星、日本物理学会第72回年次大会、2017 年 3 月 17 日、大阪大学)
- 高速繰り返しパルス磁石とFabry-Pérot共振器を用いた真空の複屈折の探索, (樊星、2016年度修士学位論文)
- Search for Vacuum Magnetic Birefringence with Pulsed Magnets, (S. Kamioka、9th International workshop on Fundamental Physics Using Atoms(FPUA)、2017年1月10日、京都大学桂キャンパス)
- パルス磁石を用いた真空複屈折の探索I, (樊星、日本物理学会2016年秋季大会、2016 年 9 月 22 日、宮崎大学)
- パルス磁石を用いた真空複屈折の探索II, (上岡修星、日本物理学会2016年秋季大会、2016 年 9 月 22 日、宮崎大学)
- Repeating Pulsed Magnet System for Axion-like Particle Searches and Vacuum Birefringence Experiments, (T. Yamazaki, et. al, NIM A 833(2016)122–126, arXiv: 1604.06556)
- パルス磁石を用いた真空複屈折の探索I, (樊星、日本物理学会第71回年次大会、2016 年 3 月 22 日、東北学院大学)
- パルス磁石を用いた真空複屈折の探索II, (上岡修星、日本物理学会第71回年次大会、2016 年 3 月 22 日、東北学院大学)
- パルス磁石を用いた真空複屈折の探索(ポスター), (樊星、量子エレクトロニクス研究会「極限計測の科学と技術」、2015 年 12 月 18 日、東京大学山中寮内藤セミナーハウス)
- 光を使って真空・時空を探る, (浅井祥仁、量子エレクトロニクス研究会「極限計測の科学と技術」、2015 年 12 月 19 日、東京大学山中寮内藤セミナーハウス)
- Search for Vacuum Magnetic Birefringence with Pulsed Magnet, (X. Fan、Fundamental Physics Using Atoms (FPUA2015)、2015 年 12 月 1 日、理化学研究所和光キャンパス)
- X線自由電子レーザーを用いて真空を探る, (山崎高幸、山道智博、稲田聡明、高エネルギーニュース Vol.34 No.2(2015)97)
- パルス磁石を用いた真空複屈折の探索, (樊星、日本物理学会2015年秋季大会、2015 年 9 月 26 日、大阪市立大学)
- パルス磁石を用いた真空複屈折の探索, (樊星、日本物理学会第70回年次大会、2015 年 3 月 21 日、早稲田大学)